アンカーミキサーは容器に沿って翼が形成された船の錨のような形状をしており、処理物の混合に利用されています。容器の壁面近くに翼があるので高粘度処理物に効果がありそうですが、軸方向(上下方向)への流れが弱いことが知れらています。
今回は次の条件でCFD解析を行い、CFD解析に影響を及ぼさない粒子マーカーを用い混合性等を確認しました。
翼先端周速 V tip[m/s] | 1 |
処理液粘度 [Pa・s] | 10, 1, 0.1, 0.01 |
密度[kg/m3] | 1000 |
撹拌レイノルズ数 Re[-] | 17, 167, 1685, 16854 |
粒子マーカー | 質量体積なし |
粒子マーカー 開始タイミング | 流れ形成後 |
粒子マーカー初期位置上側について、経過時間で確認した結果を次に示します。流速コンターのカラーから処理液の流れが全体によどみなく十分あることがわかります。粒子マーカーの移動から20周回転後には粘度1Pa・s以下で粒子マーカーが容器底部へ到達していますが、その一方で粘度10Pa・sでは粒子マーカーが容器底部へ到達していません。
次の図は粒子マーカー初期位置下側について、同様に確認したものです。20周回転後には粘度0.1Pa・s以下で粒子マーカーが液面付近に到達していますが、粘度1Pa・s以上では粒子マーカーが液面付近に到達していません。これらのことからアンカーミキサーでは粘度1Pa・s以上の粘度で回転方向への流れは良好であるものの、軸方向への流れは少なく混合に時間を要することがわかります。
最後に以上の結果を動画にまとめたものを示します。粒子マーカーがしだいに寄り集まってしまっているのは、解析メッシュの解像度不足による誤差だと思われます。
今回はアンカーミキサーによる混合をテーマにCFD解析を行いました。どの程度までの粘度までなら、短時間で混合ができそうかイメージができたと思います。CFD解析では撹拌挙動を可視化することで直感的な理解が容易にできるメリットがあります。一方CFD解析はコンピュータによる架空のシミュレーションであることから、なんらかの妥当性検証が不可欠です。今回の例では処理液のサンプリングなどにより検証が可能と考えられます。